がんゲノミクス:494例の肝細胞がんに対する高深度全ゲノム解析
Nature 627, 8004 doi: 10.1038/s41586-024-07054-3
全世界の肝細胞がん(HCC)症例は、半数以上が中国で診断されたものである。しかし、中国でのB型肝炎ウイルス(HBV)関連HCCの全ゲノム解析は限られており、これまでのHCCのゲノム解析は、主にHBV感染者の少ない集団からのものであった。本研究で我々は、中国肝がんアトラス(CLCA)プロジェクトにおいて、494例のHCCに対して高深度の全ゲノム塩基配列解読(平均深度120×)を行った。その結果、これまでに知られていなかったがんドライバー候補として、6カ所のコード領域、28カ所の非コード領域が特定された。また、これまでに報告されていない変異シグネチャーが5つ見つかり、この中には、アリストロキア酸に関連した挿入欠失(indel)と二塩基置換のシグネチャーや、今回我々がSBS_H8と命名した一塩基置換シグネチャーが含まれる。変異周辺5塩基のシグネチャー解析と実験的検証により、SBS_H8はアリストロキア酸に関連したSBS22とは異なることが確かめられた。HBVのゲノム組み込みは染色体外環状DNAの形をとり得ることが分かり、重要なことは、環状DNAに含まれるがん遺伝子のコピー数の増加と発現の上昇につながっていることである。我々の高深度データにより、染色体粉砕(クロモスリプシス)や連環染色体断裂融合(クロモプレクシー)、カタエギスなど、サブクローン性のクラスター構造変化の解析も可能になり、これらの複雑な構造異常な事象は、肝がん発生の後期にも起こることが示唆された。これら全ての変異に対するパスウェイ解析ではさらに、非コード領域変異と肝臓代謝の調節異常とが結び付けられた。我々はまた、in vitroとin vivoアッセイを行い、コードおよび非コードがんドライバー候補として特定されたフィブリノーゲンα鎖(FGA)が、HCCの進行と転移を調節することを示した。我々のCLCA研究は、中国人HCCにおける詳細なゲノム全体像と進化史を描き出し、重要な臨床的意義を示している。

