進化学:ヒトと類人猿の尾の喪失という進化の遺伝的基盤について
Nature 626, 8001 doi: 10.1038/s41586-024-07095-8
尾の喪失は、ヒトおよび類人猿へとつながる進化系統に沿って起こった最も顕著な解剖学的変化の1つであり、これがヒトの二足歩行への寄与に役割を果たしたという説もある。しかし、ヒト上科動物で尾の喪失という進化を推進した遺伝的機構は、いまだ明らかにされていない。本論文で我々は、ヒト上科祖先のゲノムにおける単一のAluエレメントの挿入が尾の喪失という進化に寄与した可能性を示す証拠を提示する。TBXT遺伝子のイントロンに挿入されたこのAluエレメントは、ゲノム上で逆向きにコードされている近傍の祖先的Aluエレメントと対をなし、ヒト上科に特異的な選択的スプライシング事象を生じさせていることが実証された。このスプライシング事象の影響を調べるため、我々は、Tbxtの完全長アイソフォームとエキソンがスキップされたアイソフォームを共に発現し、ヒト上科オルソログTBXTの発現パターンを模倣するマウスモデルを複数作製した。その結果、両方のTbxtアイソフォームを発現するマウスには、胚の尾芽におけるTbxtアイソフォームの相対的発現量に応じて、尾の完全な喪失や短縮が認められた。これらの結果は、エキソンがスキップされた転写産物が尾の喪失という表現型を誘導するのに十分であるという考え方を支持している。さらに、エキソンがスキップされたTbxtアイソフォームを発現するマウスは、ヒトの新生児の約1000人に1人に見られる疾患である、神経管閉鎖障害(NTD)を発症した。このように、尾の喪失という進化は、神経管閉鎖障害の可能性という適応コストと関連してきた可能性があり、これは現在のヒトの健康にも引き続き影響を及ぼしている。

