神経変性:ヒトの神経ネットワークモデルで明らかになったALSとFTLDにおけるNPTX2の異常
Nature 626, 8001 doi: 10.1038/s41586-024-07042-7
神経変性のヒト細胞モデルで要求される再現性と長寿命は、加齢依存的疾患をシミュレーションする上で必要である。このような系は、動物モデルで直接研究することのできないヒト特異的機構が関与するTDP-43プロテイノパチーでは、特に必要となる。本研究で我々は、TDP-43異常の出現とその結果を調べるために、神経前駆細胞の手動選択により誘導多能性幹細胞由来のiCoMoNSC(colony morphology neural stem cell)を作製した。単一細胞トランスクリプトミクスと独立した神経幹細胞との比較により、iCoMoNSCは固有の均一性を持ち、自己複製を行うことが明らかになった。分化したiCoMoNSCは、シナプス接続して電気生理学的に活性なニューロンからなる自己組織化した多細胞系を形成し、長寿命の機能的ネットワーク(iNetと命名)へと成熟した。iNetでのニューロンとグリア細胞の成熟は、大脳皮質オルガノイドの成熟と類似していた。iNet内で少数のニューロンに野生型TDP-43を過剰発現させると、TDP-43タンパク質の断片化と凝集が進行し、機能の部分的な喪失と神経毒性が引き起こされた。単一細胞トランスクリプトミクスでは、TDP-43過剰発現ニューロンや、核内TDP-43の喪失を示すTDP-43プロテイノパチー患者において、新たに一連のRNA標的が誤調節されていることが明らかになった。最も強く誤調節されていた標的はシナプスタンパク質NPTX2をコードしており、NPTX2レベルはその3′非翻訳領域へTDP-43が結合することにより制御される。iNetでNPTX2を過剰発現すると神経毒性が見られたが、NPTX2の誤調節を修正すると、TDP-43によって誘導される神経変性由来のニューロンが部分的に救済された。重要なことに、NPTX2は、TDP-43異常を伴う筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭葉変性症(FTLD)の患者由来のニューロンで、一貫して誤蓄積していた。我々の研究は、TDP-43の誤調節とNPTX2の蓄積を直接結び付けるものであり、従って、TDP-43依存的な神経毒性経路が明らかとなった。

