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健康科学:大規模地域サーベイランス研究における持続的なSARS-CoV-2の有病率

Nature 626, 8001 doi: 10.1038/s41586-024-07029-4

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の持続的な感染は、ウイルスのリザーバーとして働き、将来的なアウトブレイク(集団発生)の種になったり、非常に多様な系統を生じたり、急性期後の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)後遺症(long COVID)の症例に関与したりする可能性がある。しかし、持続感染の集団有病率やそれらのウイルス量の動態、感染経過中の進化的動態についてはほとんど明らかにされていない。本研究で我々は、全国的な感染調査の一環として収集されたウイルスの塩基配列解読データを用いて、少なくとも30日間にわたってSARS-CoV-2のRNAが持続的に高い値を示した381人を特定した。そのうち、54人ではウイルスRNAが少なくとも60日間持続していた。複製していないRNAの持続を全て除外することはできないが、入手可能な証拠は、これらがウイルス複製の継続を示唆しているため、ここではこれらを「持続感染」とする。持続感染者は非持続感染者よりも、long COVIDを自己申告する確率が50%以上高かった。感染の0.1〜0.5%で、高ウイルス量の典型的なリバウンドを伴う持続感染となり、少なくとも60日間続くと推定された。感染者の一部では、ウイルスのアミノ酸置換が多数見つかり、これは強い正の選択期間を示している。一方で、長期間にわたり配列の変化にコンセンサスがない感染者もおり、これは弱い選択と一致する。置換には、SARS-CoV-2変異株の系統を定める変異、モノクローナル抗体の標的部位の変異、免疫不全の人によく見られる変異が含まれる。本研究はSARS-CoV-2の感染や疫学、進化に対する理解と特性解析を行う上で深い意味がある。

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