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神経免疫学:ストレス感受性およびうつにおける循環血中の骨髄由来MMP8

Nature 626, 8001 doi: 10.1038/s41586-023-07015-2

心理社会的ストレスは、免疫系や脳をはじめとして体に大きな影響を及ぼす。多数の前臨床研究と臨床研究で、末梢免疫系の変化と大うつ病性障害(MDD)などのストレス関連障害が結び付けられているが、その根底にある機構についてはよく分かっていない。本研究で我々は、循環血中の骨髄系細胞特異的プロテイナーゼであるマトリックスメタロプロテイナーゼ8(MMP8)の発現が、MDD患者の血清や、慢性社会的敗北ストレス(CSDS)後のストレス感受性マウスで上昇していることを示す。マウスでは、この増加は、細胞外空間の変化や側坐核(NAc)での神経生理学的変化、さらには社会的行動の変化も引き起こすことが分かった。我々は、マスサイトメトリーと単一細胞RNA塩基配列解読を組み合わせて用いて、循環血中と脳内の免疫細胞の高次元表現型解析を行い、末梢血の単球がストレスによって強い影響を受けることを明らかにした。ストレス感受性マウスでは、循環血中の単球と脳へ輸送される単球の両方で、CSDS後にMmp8の発現が上昇していた。さらに、循環血中のMMP8はNAcの実質に直接浸潤し、細胞外空間の超微細構造を制御することも実証された。MMP8を枯渇させると、ストレス誘発性の社会的回避行動や、NAcの神経生理学的性質や細胞外空間の変化が防がれた。これらのデータをまとめると、末梢免疫因子がストレス状況下で中枢神経系の機能や行動に影響を及ぼし得る機構が明らかになった。特定の末梢免疫細胞由来のマトリックスメタロプロテイナーゼの標的化は、ストレス関連の神経精神疾患に対する新たな治療標的となり得る。

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