遺伝学:複数の冠動脈疾患遺伝子の内皮細胞プログラムへの収斂
Nature 626, 8000 doi: 10.1038/s41586-024-07022-x
ゲノム規模関連解析(GWAS)で見つかったバリアントを疾患の基盤機構に結び付けることは、いまだに困難である。一部の疾患では、複数のGWAS座位が同一の生物学的経路で働く遺伝子を含む例を探す戦略が成功している。しかし、どの遺伝子がどの経路で働くかに関する現在の知識は不十分で、特に細胞タイプ特異的な経路や研究の進んでいない遺伝子については不足している。本論文で我々は、GWASバリアントを機能と結び付ける新たな方法を報告する。この方法では、エピゲノムデータを用いてバリアントを遺伝子に、Perturb-seqを用いて遺伝子を新規経路に結び付け、これらのデータを統合してGWAS座位の経路上への収斂を特定する。我々はこの手法を、冠動脈疾患(CAD)の遺伝的リスクに関する内皮細胞の役割の検討に適用し、脳海綿状血管腫(CCM)のシグナル伝達経路に収斂する43のCAD GWASシグナルを見いだした。この経路の2つの調節因子CCM2とTLNRD1は、それぞれ1つのCADリスクバリアントと結び付けられ、これらが他のCADリスク遺伝子群を調節し、内皮細胞のアテローム保護過程に影響を及ぼすことが分かった。今回の結果が示唆するモデルは、CADリスクは部分的には、原因となる遺伝子が内皮細胞内の特定の転写経路上に収斂することで駆動される、というものである。また、ありふれた血管疾患(CAD)とまれな血管疾患(CCM)に共通する遺伝子の存在が浮き彫りになるとともに、TLNRD1が、これまで特性が明らかになっていなかったCCMシグナル伝達経路の新規メンバーであることが明らかになった。今回の手法は、他のありふれた多遺伝子病についても、バリアントを機能に結び付ける上で広く有用なものとなるだろう。

