生化学:ヒト天然変性プロテオームのコンホメーションアンサンブル
Nature 626, 8000 doi: 10.1038/s41586-023-07004-5
天然変性タンパク質とタンパク質中の天然変性領域(まとめてIDRとする)は、生物の全ての界でプロテオームにわたって広がっており、生物学的機能を形成するのを助け、多くの疾患に関わっている。IDRは過渡的に形成された構造からなるさまざまな集合中に存在しており、一般的なアミノ酸配列–構造–機能という関連は存在しない。タンパク質科学の発展により、折りたたまれたタンパク質の三次元構造予測はプロテオーム規模で可能となっている。しかしそれとは対照的に、IDRのコンホメーションの特性についての知識は不足している。それは、変性タンパク質のアミノ酸配列はほとんど保存されていないこと、また、実験的に特徴が調べられているのはそれらのタンパク質の一部だけであることなどによっている。IDRの構造学的性質のプロテオームにわたる予測ができないことは、IDRの機能的な役割やIDRが進化により形作られた過程の解明を制限している。我々は、以前に行われた個々のIDRの構造学的研究を補うものとして、IDRのコンホメーションアンサンブルを生じさせる効率の良い分子モデルを開発し、それを用いてアミノ酸配列からそれらのコンホメーションの特性の予測を行った。今回我々はこのモデルを用いて、ヒトプロテオーム中のほぼ全てのIDRをシミュレートした。そして、2万8058のIDRのコンホメーションアンサンブルを分析することで、鎖のコンパクト化が細胞機能と細胞内の局在場所とどのように相関しているかを解明した。我々はまた、アミノ酸配列の特徴と鎖のコンパクト化との関係についての知見を示し、我々のシミュレーションデータで訓練した機械学習モデルを用いて、オルソログにわたってコンホメーションの特性が保存されていることを明らかにした。我々の結果は、個々のタンパク質システムについての以前の研究からの観察結果を再確認するもので、コンホメーションアンサンブルが細胞の機能や局在、アミノ酸配列、進化上の保存、そして疾患バリアントとプロテオーム規模でどのように結び付くのかを例証している。コンホメーションの特性についての我々のデータベースは自由に利用できるので、さらなる実験研究が促進され、IDRの生物学的役割や進化についての仮説が提案されるだろう。

