システム生物学:KRAS阻害に関するエネルギー的かつアロステリックな全体像
Nature 626, 7999 doi: 10.1038/s41586-023-06954-0
これまで、数千ものタンパク質がヒト疾患の治療標的として遺伝学的に検証されてきたが、ほとんどは標的化に成功しておらず、多くは「ドラッガブルでない」と見なされている。これは特に、タンパク質間相互作用を介して機能するタンパク質に当てはまる。というのも、結合界面を直接阻害することは困難であり、アロステリック部位を特定する必要があるためである。しかし、ほとんどのタンパク質はアロステリック部位が分かっておらず、また、アロステリック部位が包括的にマッピングされたタンパク質もない。今回我々は、KRASにおける阻害性アロステリックコミュニケーションについて、多数の全体的なアトラスを示すことで、この欠点に対処した。我々は、KRASの折りたたみや相互作用する6つのパートナー分子との結合性に及ぼす2万6000以上の変異の影響を定量化した。二重変異体での遺伝学的相互作用によって、大規模に生物物理学的測定を行うことが可能となり、2万2000以上の因果関係を示す自由エネルギーの変化が推測された。これらのエネルギー全体像は、変異がシグナル伝達タンパク質の結合特異性をどのように調整しているのかを定量化し、重要な治療標的のための阻害性アロステリック部位をマッピングする。アロステリックな伝播は、KRASの中心にあるβシート全体にわたって特に有効であり、KRASタンパク質のC末端ローブにある遠位ポケットを含め、多数の表面ポケットがアロステリックに働くことが遺伝学的に確認された。アロステリック変異は、通常は調べた全てのエフェクターに対する結合を阻害するが、それらは結合特異性も変化させることができるため、変異によって経路の活性化を、調節・進化・治療の目的で調整できる可能性が明らかになった。ここで述べた方法を用いることで、多くのタンパク質でアロステリックな標的部位を迅速かつ包括的に特定することが可能になるだろう。

