Article

免疫学:粘膜でのブースター接種はアカゲザルにおけるSARS-CoV-2に対するワクチン防御を増強する

Nature 626, 7998 doi: 10.1038/s41586-023-06951-3

現行の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)ワクチンによって疾患の重症化は防げるものの、その限界は、現在のオミクロン派生株への感染防御が非常に弱いことである。粘膜免疫の増強は、感染やさらなる伝播を阻止するために必要であると考えられる。現行ワクチンの経鼻投与に関する報告には一貫性がなく、これは、別の免疫感作戦略が必要であることを示唆している。今回我々は、Ad26をベースにしたSARS-CoV-2の2価ワクチンによる気管内でのブースター(追加免疫)接種が、粘膜の体液性および細胞性免疫を強く誘導し、SARS-CoV-2 BQ.1.1株のチャレンジをほぼ完全に防御することを示す。以前に免疫感作された計40頭のアカゲザルに対して、筋肉内あるいは鼻腔内、気管内の経路で2価Ad26ワクチンのブースター接種、あるいは鼻腔内経路で2価mRNAワクチンのブースター接種を行った。その結果、気管内経路でのAd26のブースター接種では、粘膜の中和抗体、IgGおよびIgAの結合抗体、CD8+およびCD4+ T細胞応答が大幅に増大し、筋肉内や鼻腔内経路でのAd26ブースター接種によって誘導されるものを上回っていた。また、気管内Ad26ブースター接種は、肺でサイトカインやナチュラルキラー細胞、T細胞、B細胞に関わる経路のロバストな上方調節も誘導した。気管内Ad26ブースター接種は、高用量のSARS-CoV-2 BQ.1.1株によるチャレンジ後に、ほぼ完全な防御をもたらしたのに対して、他のブースター接種戦略の効果は、これより劣っていた。防御効果は、粘膜の体液性および細胞性免疫応答と最も高い相関を示した。これらのデータは、こうした免疫感作戦略がロバストな粘膜免疫を誘導することを明らかにしており、呼吸器ウイルス感染を阻止するワクチン開発の実現可能性を示唆している。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度