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公衆衛生:デジタル測定による700万回の接触記録から得られたSARS-CoV-2伝播リスク

Nature 626, 7997 doi: 10.1038/s41586-023-06952-2

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に曝露した後、感染する可能性はどのくらいあるのだろうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック(世界的大流行)中に、ほぼ誰もがこの疑問を抱いた。接触追跡アプリによって、スマートフォン間の近接距離および時間の測定値が記録され、2 m以内かつ15分以上というガイドライン(この閾値を裏付ける証拠は限定的である)のような公衆衛生政策に従って、接触記録(確定症例に曝露した人)が通知された。本論文で我々は、イングランドとウェールズの国民保健サービスCOVID-19アプリによる通知を受けた700万回の接触記録を解析し、アプリの測定値が実際の伝播にどの程度反映されるかを推測した。経験的な評価基準と統計モデルから、アプリで計算されたリスクスコアと実際の伝播確率との間に強い関係があることが分かった。長距離での長時間曝露は、近距離での短時間曝露と同様のリスクを示した。陽性検査報告によって確定した伝播の確率は、初めは曝露時間とともに直線的に増加し(1時間ごとに1.1%)、数日間にわたって増加し続けた。大部分の曝露は短時間(中央値0.7時間、四分位範囲0.4–1.6)であった一方で、伝播は主に1時間から数日(中央値6時間、四分位範囲1.4–28)の間で続いた曝露によるものであった。家庭での接触記録が占める割合は全体の約6%であるにもかかわらず、伝播が占める割合は全体の40%であった。十分な準備があれば、新たな病原体の出現の数週間以内に、デジタルによる接触追跡に基づいて、プライバシーを保護しながら公衆衛生対策に情報を提供するための正確なリスク解析を実行できるかもしれない。

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