構造生物学:ヒトLINE-1 ORF2タンパク質の構造、機能と適応
Nature 626, 7997 doi: 10.1038/s41586-023-06947-z
LINE-1(L1)レトロトランスポゾンは古いパラサイト型遺伝因子で、自身の多機能酵素であるORF2p(open reading frame 2 protein)によって触媒される「コピー・アンド・ペースト」機構を介してヒトゲノムのほぼ3分の1に書き込まれている。ORF2pの逆転写酵素(RT)活性とエンドヌクレアーゼ活性は、がんや自己免疫、老化の病態生理学的性質に関係しているとされているため、ORF2pは治療標的候補となっている。しかし、ORF2pの構造と作用機構がよく知られていないことが、合理的に探索する取り組みを妨げている。本論文で我々は、ヒトORF2pの「コア」(238番目から1061番目までの残基からなり、RTドメインを含む)の複数のコンホメーション状態にある際の構造を報告する。これらはX線結晶学的方法およびクライオ電子顕微鏡によって得られた。我々の解析により、L1複製サイクルの独自の性質の一因となっている、以前に記述されたことのない2つの折りたたまれたドメイン、RNA鋳型への広範な接触、互いに関連した複数の適応が見つかった。完全長ORF2pの計算された統合構造モデルから、動的な閉じた環状のコンホメーションが明らかになり、これはレトロトランスポジション中に開くと考えられる。我々はORF2pのRT阻害の特徴を調べ、その原因となる構造基盤を明らかにした。画像化と生化学的手法により、ORF2pの非カノニカルな細胞質ゾルのRT活性によってRNA:DNAハイブリッドが生成可能であることが示され、cGAS/STINGによる自然免疫シグナル伝達が活性化され、結果としてインターフェロンが生成する。レトロウイルスのRTとは対照的に、L1のRTは短鎖RNAとヘアピンにより効率よくプライミングされる。これによって、細胞質ゾルでのプライミングが説明されるだろう。連続伸長性、DNA依存性重合、鋳型無しの塩基追加や鋳型切り替えなどの他の生化学的活性と合わせて、我々は修正したL1挿入モデルを作成した。また、我々の進化学的解析により、ORF2pと他のRNA依存性およびDNA依存性のポリメラーゼとの間に見られる構造的保存が明らかになった。今回の結果はL1による重合や挿入に対する重要な機構的知見を示しており、L1の進化における歴史を明らかにし、L1を標的とする薬剤の合理的開発を可能にするものだ。

