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構造生物学:レトロトランスポジションでのヒトLINE-1による鋳型と標的部位の認識
Nature 626, 7997 doi: 10.1038/s41586-023-06933-5
長い散在性反復配列1(LINE-1、以下L1と略す)は、ヒトゲノムの3分の1近くを作ってきたレトロトランスポゾンで、遺伝的多様性やヒトの病気の能動的な原因の1つとなっている。L1はTPRT(target-primed reverse transcription)と呼ばれる機構を介して広がる。TPRTでは、L1がコードする酵素(ORF2p)が標的DNAにニック(一本鎖切断)を入れて自己RNAもしくは非自己RNAの逆転写を引き起こす。今回我々は、完全長L1 ORF2pを精製し、鋳型RNAと標的部位DNAが明確でロバストなTPRTを生化学的に再現した。また、構造を保っている鋳型RNAに結合してcDNA合成を開始中の完全なヒトL1 ORF2pのクライオ電子顕微鏡構造を報告する。鋳型のポリアデノシン領域は、5個の異なるドメインによって塩基配列特異的に認識される。5個のうちのRNA結合ドメインが鋳型のバックボーンをたわめ、RNAヘアピンのステムがL1 ORF2pのC末端部分に結合できるようにする。さらに、構造研究と生化学的再構築により、標的部位の予想外の必要条件が明らかになった。すなわち、L1 ORF2pは上流の一本鎖DNAに依存して隣接する二本鎖をエンドヌクレアーゼの活性部位に配置し、長い方のDNA鎖にニックを入れさせるので、1回のニック形成によって一方が突き出て端のそろわない形のDNA切断部が生じる。この研究により、ヒトゲノムで現在も進行中の転位の機構についての手掛かりが得られ、レトロトランスポゾンタンパク質を遺伝子治療用に加工するための情報が得られた。

