微生物学:PfRCR複合体はマラリア原虫の侵入時に赤血球との橋渡しを行う
Nature 625, 7995 doi: 10.1038/s41586-023-06856-1
マラリアの症状が現れるのは感染の血液期で、この時期に寄生虫であるマラリア原虫はヒトの赤血球内に侵入して複製を行う。最も致死性の高いヒトマラリア原虫である熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)による赤血球への侵入には、PfPCRCR複合体が不可欠であり、この複合体には、PfRH5、PfCyRPA、PfRIPR、PfCSS、PfPTRAMPが含まれている。マラリア原虫の侵入は、これらの保存されたタンパク質のそれぞれに対する抗体あるいはナノボディによって防ぐことができるため、これらは主要な血液期マラリアワクチン候補となっている。しかし、侵入の際にPfPCRCRがどのように機能するかについては、ほとんど分かっていない。今回我々は、クライオ電子顕微鏡によって決定された、PfRH5、PfCyRPA、PfRIPRを含むPfRCR複合体の構造を示す。我々は、PfRH5が開いて赤血球膜内に挿入されるという仮説を検討し、この仮説に反して、ジスルフィド結合で固定された剛直なPfRH5が効率的な赤血球侵入を仲介できることを示す。モデル化と赤血球結合アッセイにより、PfCyRPAに結合する抗体は、立体的機構を介して侵入を中和することが分かった。我々はPfRIPRの構造を決定し、PfRIPRが、多数のドメインからなる規則的なコアと、それに柔軟に連結された細長い尾部から構成されていることを示す。また、増殖中和抗体の標的である、PfRIPRのこの細長い尾部が、マラリア原虫の膜上のPfCSS–PfPTRAMP複合体に結合することも分かった。従って、モジュールからなるPfRIPRは、細長い尾部を介してメロゾイト膜に結合しており、また、その構造化されたコアがPfCyRPAおよびPfRH5を提示することで、赤血球上の受容体と相互作用する。これは、赤血球侵入の分子機構についての新たな手掛かりとなり、合理的なワクチン設計における新しい手法への道を開く。

