腫瘍免疫学:腫瘍の環状RNAはクリプティックペプチドをコードすることで抗腫瘍免疫を誘発する
Nature 625, 7995 doi: 10.1038/s41586-023-06834-7
以前に見つかった非コードゲノムが、適応免疫を刺激するクリプティック抗原としてヒト白血球抗原(HLA)に結合する複数のペプチドをコードしている可能性があることが、新たに得られたデータによって示された。しかし、抗腫瘍免疫におけるクリプティック抗原の重要性と作用機構はまだ明らかにされていない。今回我々は、HLAクラスI(HLA-I)ペプチドームの質量分析と、ヒト乳がん試料のリボソーム塩基配列解読を組み合わせて、HLA-Iに結合する抗原性クリプティックペプチドを明らかにした。これらのペプチドは、腫瘍特異的な環状RNA(circRNA)であるcircFAM53Bから非カノニカルに翻訳された。このクリプティックペプチドは、ナイーブなCD4+およびCD8+ T細胞を抗原特異的に効率よくプライミングして抗腫瘍免疫を誘導した。臨床的には、circFAM53Bの発現とそれがコードするペプチドは、抗原特異的CD8+ T細胞の大規模な浸潤、また乳がん患者と黒色腫患者の良好な生存率と関連していた。機構的には、circFAM53BにコードされたペプチドはHLA-IとHLA-II分子の両方に対して強い結合親和性を持っていた。またin vivoでは、乳がんまたは黒色腫の担がんマウスに腫瘍特異的circRNAまたはそれがコードするペプチドからなるワクチンを投与すると、腫瘍抗原特異的な細胞傷害性T細胞の浸潤の亢進が誘導され、それが効果的な腫瘍制御につながった。まとめると、我々の知見はcircRNAの非カノニカルな翻訳が効率の良い抗腫瘍免疫を促進し得ることを示しており、この結果は腫瘍特異的circRNAを用いたワクチン接種が悪性腫瘍に対する免疫療法戦略となる可能性を示唆している。

