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分子生物学:RNAを介した対称性の破れによって1つだけの嗅覚受容体を選択することが可能になる
Nature 625, 7993 doi: 10.1038/s41586-023-06845-4
嗅覚受容体(OR)の選択は、転写的優位性に関する対立遺伝子間の競合の極端な例であり、個々の嗅覚ニューロンは約2000を超えるOR対立遺伝子の中の1つを安定に転写している。OR遺伝子の選択に介在するのが多重染色体性のエンハンサーハブで、単一のOR部位で転写を活性化し、続いてこの選択を安定化する翻訳依存性フィードバックが働く。今回我々は、単一細胞ゲノミクスを用いて、さまざまなエンハンサー組成を持ち互いに競合するハブが多数形成され、そのうちの1つだけがユークロマチンの性質と転写能力を保持することを明らかにする。さらに、ORの転写はエンハンサーを誘引し、エンハンサーハブの活性を局所的に強化するが、OR RNAの方は競合するORの転写を遠くから阻害し、1つだけが転写される状態への移行を促進することを示す証拠が得られた。効力の等しいエンハンサーハブ間の対称性を破るにはORの転写だけで十分だが、ORの翻訳は優勢なハブでの転写を安定化することから、転写での優位性確保のための非コード性機構およびコード性機構が存在し、OR対立遺伝子がこれらを順次実行している可能性が示唆される。コード性のOR mRNAには非コード性の機能があって、これが核の構造に影響を及ぼし、自身の転写を亢進させ、競合相手となる対立遺伝子の転写を阻害すると考えられ、この機構の持つ意味は確率的な細胞運命決定に一般化できると、我々は提案する。

