Analysis

社会科学:COVID-19パンデミック期間中に行動科学が提言した政策に対するエビデンス統合

Nature 625, 7993 doi: 10.1038/s41586-023-06840-9

科学的エビデンスはいつも政策決定の指針となり、この過程に行動科学が担う役割はますます大きくなっている。2020年4月、1報の影響力のある論文が、行動科学からのエビデンスがどのように新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)の影響を抑え、終息させる取り組みに貢献できるのかについて詳述した19の政策提言を提案した。本論文で我々は、それらの提言について実証的に調べた747報のパンデミック関連の研究論文を評価する。我々は、政策立案への適用可能性を示すために、エビデンスの規模と、提言をエビデンスが支持するかどうかについて報告する。72人の評価者からなる2つの独立したチームは、19の提言のうち18についてのエビデンスを見いだし、両チームとも、エビデンスはそれら18の提言のうち、16(89%)を支持していることを明らかにした。最も強力なエビデンスは、文化や分極化、誤情報が政策の有効性と関連すると予想する提言を支持した。信頼される指導者や肯定的な社会規範が行動介入に対する遵守を高めるという提言は、社会的コンセンサスや超党派の合意への訴えと同様に、強い実証的な支持を得た。またメッセージの伝達において対象を絞った言葉遣いは効果がさまざまで、個人の利益を強調する、あるいは他人を保護するメッセージには効果がなかった。「物理的距離を取る」という言葉と「社会的距離を取る」という言葉を用いた場合の効果の明白な違いを評価するために利用可能なエビデンスは存在しなかった。データを含む463報の論文の解析は、総じて大規模なサンプルを有していた(418報の論文について、参加者の平均値は1万6848人、中央値は1699人だった)。その統計的検定力は、政策決定に情報を提供するための行動科学研究の適合性が向上していることを裏付けた。我々はさらに、エビデンスの選択や統合のための標準化された手法を導入することによって、科学的エビデンスを政策策定や優先順位付けに役立てるためのより広い意義を強調する。

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