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細胞生物学:mRNAのN1-メチルプソイドウリジン化はリボソームで+1フレームシフトを引き起こす

Nature 625, 7993 doi: 10.1038/s41586-023-06800-3

in vitroで転写された(IVT)mRNAは、ヒトの疾患と闘う方法となる。その例が、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)に対するワクチンとしての、IVT mRNAの使用である。IVT mRNAを標的細胞にトランスフェクションすると、これらのmRNAは翻訳されて組換えタンパク質が生成し、コードされていたタンパク質の生物活性や免疫原性が意図された治療効果を発揮する。治療用のIVT mRNAには、自然免疫系に対する免疫原性を減弱するために修飾されたリボヌクレオチドが組み込まれるのが一般的だが、それがmRNA翻訳の忠実度に及ぼす影響は十分には調べられていなかった。今回我々は、N1-メチルプソイドウリジンをmRNAに組み込むと、in vitroで+1のリボソームフレームシフトが起こることを実証し、またワクチン接種後にはBNT162b2ワクチンmRNAの翻訳によって生じる+1リボソームフレームシフト産物に対して、マウスとヒトで細胞性免疫が働くことを明らかにする。観察された+1リボソームフレームシフトは、おそらくIVT mRNAの翻訳中にN1-メチルプソイドウリジンがリボソームの停止を誘発した結果であり、フレームシフトはリボソームが滑りやすい塩基配列の所で起こる。しかし、こういった滑りやすい配列を標的にした同義変異の導入が、フレームシフト産物の産生を減少させる有効な戦略になることも実証された。これらのデータを総合することにより、修飾リボヌクレオチドがmRNA翻訳の忠実度にどのように影響するかについての理解が進んだ。mRNAをベースとするSARS-CoV-2ワクチンの翻訳の過誤から生じたヒトでの有害事象は報告されていないものの、これらのデータは、mRNAをベースとする今後の治療法で有害なオフターゲット作用が生じる可能性を明確に示しており、塩基配列の最適化の必要性が実証された。

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