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免疫学:オミクロン株への反復曝露はSARS-CoV-2従来株の免疫インプリンティングを無効にする

Nature 625, 7993 doi: 10.1038/s41586-023-06753-7

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)変異株は継続的に出現しており、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの構成を更新する必要性が浮き彫りとなっている。しかし、従来株に基づくワクチン接種によって誘導された免疫インプリンティングは、オミクロン株に基づくブースター(追加免疫)接種に対する抗体応答を減弱させる可能性がある。そのため、免疫インプリンティングに対抗するワクチン接種戦略が非常に必要となっている。今回我々は、マウスモデルとヒトコホートにおける免疫インプリンティングの程度や動態について、特にオミクロン株による反復刺激の役割に焦点を当てて検討した。マウスでは、XBB変異株のような従来株と抗原性が異なる変異株を用いた場合、オミクロン株の単回ブースター接種の有効性は非常に限られていたが、この懸念される状況は、2回目のオミクロン株ブースター接種によって緩和することができた。同様にヒトでは、オミクロン株の反復感染は、従来株ワクチン接種によって誘導された免疫インプリンティングを軽減させ、血漿と鼻粘膜の両方で、広域な中和応答を生じさせることができた。特に、オミクロン株の反復感染から単離された、受容体結合ドメイン(RBD)を標的とする781種類のモノクローナル抗体のDMS(deep mutational scanning)法に基づいたエピトープ特性解析によって、オミクロン株への2回曝露は、従来株により誘導された抗体とは異なるRBDエピトープを有する成熟したオミクロン株特異的抗体を、大きな割合で誘導できることが明らかとなった。その結果、免疫インプリンティングは大きく緩和され、またオミクロン株への単回曝露で観察された非中和エピトープへの偏りが改善された。DMSプロファイルに基づき、我々はXBB.1.5 RBDの進化のホットスポットを特定し、さらにこれらの変異は高いACE2結合親和性を維持しながら、XBB.1.5の免疫回避能力を増強できることを明らかにした。我々の知見は、COVID-19ワクチンの更新時に従来株成分の使用をやめる必要があり、オミクロン株への曝露歴がない人は更新されたワクチンブースター接種を2回受けるべきであることを示唆している。

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