ヒト遺伝学:7万6156例のヒトゲノムのバリアントを用いたゲノム変異制約マップ
Nature 625, 7993 doi: 10.1038/s41586-023-06045-0
純化自然選択によって引き起こされる、破壊的なバリアントの減少(制約)は、ヒト疾患の根底にあるタンパク質コード遺伝子の研究に広く用いられてきたが、タンパク質非コード領域に関して制約を評価しようとする試みはより困難なことが分かっている。今回我々は、オープンアクセスのヒトゲノム対立遺伝子頻度参照データセットとして最大のものである、ゲノム集積データベース(gnomAD:Genome Aggregation Database)から7万6156例のヒトゲノムのデータセットを集積・処理して公開し、これを用いて全ゲノムのゲノム制約マップ「Gnocchi(genomic non-coding constraint of haploinsufficient variation)」を作製した。我々は、局所的な塩基配列の状況とゲノムの領域的な特徴を組み合わせてバリアントの減少を検出する改良された変異モデルを提示する。予想されたとおり、タンパク質コード配列の平均的制約は、非コード領域のものより強くなっていた。非コードゲノム内では、制約領域に既知の調節エレメントとヒトの複雑な疾患や形質に関与するバリアントが多く見られ、これによって、生物学的アノテーション、疾患の関連付け、自然選択の三角測量による非コードDNA解析が促進された。より強く制約された調節エレメントはより強く制約されたタンパク質コード遺伝子を調節する傾向があることから、従来の遺伝子制約の指標ではいまだ認識されていない制約遺伝子の特定に、非コード領域の制約が役立ち得ることが示唆される。我々は、このゲノム規模の制約マップによって、ヒト遺伝子の機能的バリアントの特定と解釈が改善することを実証する。

