遺伝学:オーストラリア先住民のゲノムが示す構造の深さと新規バリアントの豊富さ
Nature 624, 7992 doi: 10.1038/s41586-023-06831-w
オーストラリアの先住民には、言語的・文化的に豊かな歴史がある。こうした歴史が遺伝的多様性にどのように関係しているのかは、オーストラリア先住民のゲノム研究との関わりが限定的であるため、ほとんど知られていない。今回我々は、最も広がりの大きな語族(パマ・ニュンガン語族)とは異なる言語(ティウィ語)の話者を含む、4つの遠隔地先住民コミュニティーに属する159人のゲノムを解析した。オーストラリア先住民のゲノムのこうした大規模コレクションは、先住民コミュニティーとの慎重な関わり合いと協議によって可能になった。ゲノム解析の結果、オーストラリア全土にわたって極めて明確な集団構造が見られることが明らかになった。この構造は、3万5000~2万6000年前におけるコミュニティー間の複数の分岐期、そして長期の小さいが安定した有効集団サイズによって駆動されたものである。パプアニューギニア人集団からの初期の分岐(4万7000年前)やユーラシア人集団からの初期の分岐などを含む、こうした人口動態史によって、アフリカ外で見られるものとしては報告例のないこれまでで最も高い遺伝的変動の比率と、全球サンプルと比べて広範なホモ接合性がもたらされた。こうした変動の大部分は、全球の参照パネルや臨床データセットに認められなかったもので、機能的影響の予想される変動は他の集団よりもホモ接合性である可能性が高く、医療ゲノミクスに影響してくると思われる。今回の結果は、オーストラリア先住民が単一の均質な遺伝的集団ではなく、ニューギニアの人々との遺伝的関連性も一様ではないことを明らかにしている。これらのパターンは、オーストラリア先住民の遺伝的多様性の全容はまだ明らかになっておらず、これによってオーストラリア先住民のゲノム医療や公平な医療が妨げられている可能性を示唆している。

