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医学研究:ドライパウダーのエアロゾルによる単回投与で免疫感作が可能なSARS-CoV-2吸入ワクチン

Nature 624, 7992 doi: 10.1038/s41586-023-06809-8

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)により、ワクチン接種技術に大きな進歩が促された。しかし、粘膜免疫応答を誘導するワクチンや、非侵襲的な単回投与法が緊急に必要とされている。今回我々は、全身および粘膜での強力な免疫応答を誘導する、ドライパウダーのエアロゾルによる単回投与型の重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)吸入ワクチンを開発した。このワクチンは、タンパク質性コレラ毒素Bサブユニットが、SARS-CoV-2の受容体結合ドメイン(RBD)を抗原として提示するよう構成された組み立てナノ粒子を、最適な空気力学的サイズのマイクロカプセル内に封入している。また、この独自のナノ–マイクロ結合構造が、効率的な肺胞送達、持続的な抗原放出、抗原提示細胞による取り込みを支えており、これらは免疫応答の誘導に有利な特徴である。さらに、このワクチンは、マウス、ハムスター、非ヒト霊長類において、IgGやIgAの強力な産生に加え、局所的なT細胞応答を誘導し、総合的にSARS-CoV-2に対する効果的な防御をもたらす。その上、従来株の抗原とオミクロン変異株の抗原を同時に提示するモザイク型ワクチンによって、同時流行している株やオミクロン変異株の伝播に対する抗体応答の幅が広がることが実証された。これらの知見は、この吸入型ワクチンが、COVID-19や他の呼吸器感染症と闘うための有望な多価プラットフォームとして使用できることを裏付けている。

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