Article
神経科学:霊長類脊髄で運動ニューロンの加齢を進めるCHIT1陽性ミクログリア
Nature 624, 7992 doi: 10.1038/s41586-023-06783-1
加齢は脊髄関連疾患の重要な因子であるが、この関係の加齢特異的な機構はよく分かっていない。今回我々は、この知識の溝を埋めるため、非ヒト霊長類(NHP)で、単一核RNA塩基配列解読解析と行動解析および神経生理学解析とを合わせた研究を行った。その結果、運動ニューロンの老化と、ミクログリアの過活性化を伴う神経炎症が、脊髄の加齢の複雑に絡み合う特徴であることが明らかになった。その基礎となる機構として、我々は、NHPの加齢脊髄やヒト生検試料に特異的なCHIT1(哺乳類の分泌性キチナーゼ)の発現上昇によってはっきり区別される、神経毒性のミクログリア状態を特定した。加齢脊髄では、CHIT1陽性のミクログリアが運動ニューロンの周囲に選択的に局在し、それらは部分的にはSMAD信号を活性化することで、老化の引き金を引く能力を持つ。我々はまた、分泌されたCHIT1が運動ニューロン老化を進める役割を、in vivoではNHP脊髄をモデルに用い、in vitroではヒト運動ニューロンと微小環境の相互作用の精巧なシステムモデル化を用いて確認した。さらに我々は、老化防止物質とされるアスコルビン酸が、CHIT1の老化促進作用と拮抗し、加齢サルの運動ニューロンの老化を緩和することを実証した。今回の知見は、単一細胞分解能で加齢霊長類脊髄の細胞・分子景観を提示し、脊髄変性疾患に対する新規のバイオマーカーと介入標的を明示するものである。

