Article

神経科学:脊椎動物の網膜におけるニューロンのクラスとタイプの進化

Nature 624, 7991 doi: 10.1038/s41586-023-06638-9

網膜の基本設計は脊椎動物全体で保存されているが、視覚的なニーズは種によって大きく異なる。網膜の細胞タイプは、これらのさまざまなニーズに合わせるために進化してきた可能性があるが、その系統的な研究は行われていない。今回我々は、17種(ヒト、非ヒト霊長類2種、齧歯類4種、有蹄類3種、オポッサム、フェレット、ツパイ、鳥類1種、爬虫類1種、硬骨魚類1種、ヤツメウナギ)の網膜の単一細胞トランスクリプトームアトラスを作製・統合した。網膜細胞の6つのクラス(光受容器、水平細胞、双極細胞、アマクリン細胞、網膜神経節細胞〔RGC〕およびミュラーグリア)は分子的に高度に保存されており、種間のトランスクリプトームの多様性が進化の距離に関連することが分かった。主要なサブクラスも保存されているが、クラス内またはサブクラス内の細胞タイプ間の多様性はより顕著であった。一方、統合解析から、多数の細胞タイプは種間で共通しており、これは保存された遺伝子発現プログラムに基づいていて、初期の祖先脊椎動物にまでさかのぼるようであることが明らかになった。細胞タイプ間の多様性の程度は、網膜外層(光受容器)から網膜内層(RGC)に向かって増加していることから、進化は網膜出力を形作るために優先的に作用していることが示唆される。さらに、ヒト網膜のRGCの80%以上を構成していて、高い視力に役立っており、これまでは霊長類に限定的だと考えられていた小型RGCの、齧歯類オルソログが見つかった。このマウスオルソログは、ヒトとは対照的に、より大きな受容野を持ち、マウスRGCの約2%を構成していた。霊長類タイプもマウスのオルソロガスタイプも、投射は視床で多く見られ、一次視覚野に視覚情報を伝える。小型RGCは霊長類で新たに出現したわけではなく、進化的に古い細胞タイプの子孫で、霊長類が進化するにつれてサイズの減少と数の増加が起こり、これによって高い視力と視覚情報の皮質処理の上昇が促進されたことが示唆される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度