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単一分子分光学:原子間力顕微鏡による単一分子の電子スピン共鳴

Nature 624, 7990 doi: 10.1038/s41586-023-06754-6

開放量子系におけるデコヒーレンスの理解と制御は、科学における基本的な関心の対象であるが、その一方で、量子情報処理には長いコヒーレンス時間の実現が重要である。個々の系については大きな進展があり、ナノスケール分解能で単一スピンの電子スピン共鳴(ESR)が実証されているものの、多くの複雑な固体量子系におけるデコヒーレンスを理解するには、最終的には原子スケールまで環境を制御する必要があり、これは原子や分子のレベルで特性評価・操作する能力がある走査型プローブ顕微鏡によって実現できる可能性がある。従って、走査型トンネル顕微鏡においてESRが最近実現されたことは、この目標への節目であり、その後すぐに、コヒーレント振動が実証され、実空間の原子レベル分解能で核スピンが得られている。原子操作は、初の人工的な原子スケール量子デバイスの実現という大きな望みさえかき立てた。しかし、この方法に固有の電流に基づく検出では、コヒーレンス時間に制限がある。今回我々は、ポンプ–プローブESR原子間力顕微鏡(AFM)による、個々のペンタセン分子の非平衡三重項状態間の電子スピン遷移の検出を実証する。こうした遷移のスペクトルはサブナノ電子ボルトのスペクトル分解能を示し、これによって、同位体配置しか違いのない分子の局所的な識別が可能になった。さらに、これらの電子スピンは数十マイクロ秒にわたってコヒーレントに操作できた。我々は、単一分子ESR-AFMは原子操作や特性評価と組み合わせることができるため、原子レベルで画定された量子構成要素におけるデコヒーレンスの原子論的起源を知り、基礎的な量子センシング実験を行う道が開かれると予想する。

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