がん:細胞外マトリックスは腫瘍イニシエーションに対する局所の反応能を決定する
Nature 623, 7988 doi: 10.1038/s41586-023-06740-y
皮膚の表皮は一生を通じて常に再生している。再生と分化のバランスが乱れると、制御不能な増殖や腫瘍イニシエーションが引き起こされることがある。しかし、発がん性変異が再生と分化のバランスにどのように影響し、クローン増殖や細胞競合、組織定着、腫瘍発生を引き起こすのかは分かっていない。今回我々は、生体顕微鏡法を用いたin vivoでのクローン解析、単一細胞解析および機能解析を組み合わせた学際的手法により、Smoothened(SMO)の構成的活性型で、基底細胞がんの発生を誘導する発がん性変異であるSmoM2が、細胞競合と腫瘍イニシエーションにリアルタイムでどのように影響を及ぼすのかを示す。我々は、マウスの耳の表皮でSmoM2を発現させると、クローン増殖と同時に腫瘍イニシエーションと浸潤が誘導されることを見いだした。対照的に、背中の皮膚の表皮でSmoM2を発現させると、側方の細胞競合を誘導するクローン増殖が引き起こされたが、これには浸潤や腫瘍形成が伴わなかった。単一細胞解析では、がん遺伝子の発現は、耳では成体毛包間細胞から胚性毛包前駆細胞(EHFP)状態への細胞の再プログラム化と関連しているが、背中の皮膚では関連していないことが明らかになった。耳と背中の皮膚を比較すると、これらの2つの皮膚タイプでは真皮の組成が大きく異なっており、背中の皮膚では剛性が高く、コラーゲンIのネットワークがより密であることが明らかになった。コラゲナーゼ処理、慢性的な紫外線照射、あるいは自然老化による背中の皮膚のコラーゲンIの発現低下によって、SmoM2発現後のEHFPへの再プログラム化や腫瘍イニシエーションに対する、背中の皮膚の基底細胞が持つ自然抵抗性が無効化された。まとめると本研究は、細胞外マトリックスの組成が、腫瘍イニシエーションや浸潤に対する、体の異なる領域の影響の受けやすさを調節していることを示している。

