分子生物学:ポリメラーゼθが関わる末端連結ではポリメラーゼδとθが順次必要となる
Nature 623, 7988 doi: 10.1038/s41586-023-06729-7
ゲノムの完全性と細胞の生存には、染色体二本鎖切断の速やかな修復が必要である。ポリメラーゼθが関わる末端連結経路は二本鎖切断の解消に重要な役割を果たしており、他のDNA修復経路に欠陥があるがんでは必須となるので、治療標的として注目されている。この経路では、切断末端に隣接する2~6ヌクレオチドの相補的配列(マイクロホモロジー)のアニーリングが必要で、その後にポリメラーゼθによって末端を架橋するDNA合成が開始される。しかし、経路のこれ以外の段階については解明が不十分で、それらに必要な酵素もまだ分かっていない。今回我々は、まず必要なのは対合していない3′尾部のエキソヌクレアーゼによる分解であって、ポリメラーゼθが合成を開始できるのはその後であること、それに続いて、より正確で連続反応性を持つ鎖置換型のポリメラーゼへの切り替えが行われて修復が完了することを明らかにする。さらに、これら両方の段階には複製ポリメラーゼであるポリメラーゼδが必要であり、突出末端のトリミングにはその3′→5′方向に働くエキソヌクレアーゼ活性が、次いで起こる伸長と修復完了にはそのポリメラーゼ活性が必要なことが判明した。この経路に不可欠で特異的な酵素反応段階は、順次起こる2つの段階に2種類のポリメラーゼが別々に関わることによって行われる。これらの反応段階をまとめるのに必要な共役は、2つのポリメラーゼが物理的に結合することによって促進されるらしい。ポリメラーゼδと末端架橋合成を行えるポリメラーゼθとのこの組み合わせは、本来的には忠実度の高いポリメラーゼδが、有糸分裂期DNA合成や、切断により誘発されるマイクロホモロジーが媒介する複製のようなゲノム不安定化過程に関わる理由を説明する助けとなるかもしれない。

