遺伝学:哺乳類の発生異常についての単一細胞での全胚表現型解析
Nature 623, 7988 doi: 10.1038/s41586-023-06548-w
マウスモデルは、ヒトの疾患、特に発生異常を研究するための重要なツールである。しかし、表現型解析の従来の手法では、発生中のマウス全体において、わずかな異常を検出できない可能性がある。今回我々は、マウスの遺伝学的モデルの系統的な表現型解析のスケーラブルなプラットフォームとして、全胚の単一細胞RNA塩基配列解読法の確立を目指した。我々は、組み合わせ索引作成に基づく単一細胞RNA塩基配列解読法を適用して、22種類の変異型胚と4系統の野生型遺伝子型の胚を含む13.5日齢のマウス胚101個についてプロファイリングを行い、計160万個以上の核のプロファイルを作成した。22種類の変異型胚は、確立された多系統疾患から個々の調節領域の欠失まで、予想される広範な表現型重症度に相当する。我々は、52の細胞タイプあるいは軌跡にわたって組成や遺伝子発現における差異を検出するための解析的枠組みをいくつか開発し、それらを適用した。その結果、一部の変異型胚は数十の軌跡の変化を示すのに対し、別の変異型胚は少数の細胞タイプでのみ変化を示すことが分かった。また、広く用いられている野生型系統間に差異があることが明らかになり、機能獲得変異型胚と機能喪失変異型胚の表現型解析が比較され、トポロジカルドメイン(TAD)境界の欠失の特徴が明らかになった。注目すべきことに、一部の変化は変異型胚間で共通しており、これは、この手法のさらなる拡張によって、発生の多面発現性が「分解可能」になる可能性を示唆している。まとめると我々の知見は、全胚の単一細胞プロファイリングが、マウス変異型胚の系統的な分子・細胞表現型の特徴解析を前例のない広範さと分解能でどのように明らかにできるかを示している。

