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分子生物学:S期での親鎖H3K9me3の非対称的な分配がL1配列のサイレンシングを起こす
Nature 623, 7987 doi: 10.1038/s41586-023-06711-3
真核生物では、反復DNA配列の転写がヒストンH3リシン9のトリメチル化(H3K9me3)によって抑制されている。反復配列のサイレンシングの解除は、ゲノムの不安定性、ヒトではがんや老化などの疾患につながる。H3K9me3がヘテロクロマチンのサイレンシングの確立と維持に果たす役割については広く研究が行われてきたが、複製中のDNA鎖での親H3K9me3の分割の基盤となるパターンや機構は解明されていない。今回我々は、H3K9me3は優先的に複製フォークのリーディング鎖へと移されること、これが起こるのは主としてLINE(long interspersed nuclear element;LINE-1、L1とも呼ばれる)レトロトランスポゾン(理論上は複製フォークの移動と向かい合う方向に転写される)の所であることを明らかにした。機構としては、HUSH(human silencing hub)複合体がリーディング鎖DNAポリメラーゼPolεに結合し、H3K9me3の非対称的な分配に関与する。Polεのサブユニット(POLE3とPOLE4)、もしくはHUSH複合体(MPP8とTASOR)を持たない細胞は、H3K9me3の非対称性が崩れ、LINEの発現が増加した。H3K9me3と結合できないMPP8変異体を発現する細胞やPolεとの結合が減少しているTASOR変異体でも、同様な結果が得られた。これらの結果から、HUSH複合体がPolεと共に働いて、複製フォークの移動と向かい合う方向のLINEでのH3K9me3の非対称分配を促進してS期のLINE発現を抑制するという予想外の仕組みが明らかになった。

