がんゲノミクス:11種類の腫瘍で見られた、がん推移の際のエピジェネティック調節
Nature 623, 7986 doi: 10.1038/s41586-023-06682-5
クロマチンのアクセシビリティーは細胞のアイデンティティーや遺伝子発現の調節に極めて重要であり、アクセシビリティーの変化はがんのイニシエーション、プログレッションおよび転移の促進に関わっている。発がん性の推移への遺伝的寄与については研究が行われているが、エピジェネティックな促進因子についてはそれほど解明が進んでいない。今回我々は、225の試料から得た単一核のクロマチンアクセシビリティーデータ(1個の核でトランスポザーゼが接近できるクロマチンを調べるアッセイを使用)と、206の試料から得たそれにマッチする単一細胞あるいは単一核のRNA塩基配列および発現データを使って、がん種横断的エピジェネティック・トランスクリプトミックアトラスを作製した。それぞれのプラットフォームから得た100万個以上の細胞を、接近可能なクロマチン領域、転写因子モチーフ、レギュロンの集積を手掛かりに分析し、がんの推移に関連するエピジェネティックなドライバーを見つけ出した。一部のエピジェネティックドライバーは複数のがんに見られるが(例えば、ABCC1とVEGFAの調節領域、GATA6とFOXファミリーモチーフなど)、がん特異的なものもある(例えば、FGF19やASAP2、EN1の調節領域、PBX3モチーフなど)。エピジェネティック因子によって変化する経路の中では、TP53、低酸素およびTNFシグナル伝達経路はがんのイニシエーションに結び付くが、エストロゲン応答、上皮間葉転換、頂端結合は転移への進行に関連していた。さらに、エンハンサーのアクセシビリティーと遺伝子発現の間には顕著な相関があることが判明し、エピジェネティックなドライバーと遺伝的ドライバーとの協働も明らかになった。このアトラスは、がんの推移でのエピジェネティックな動態についてさらに研究を進めるための基盤となるだろう。

