Perspective
細胞生物学:ミトコンドリア移送が持つパワーと可能性
Nature 623, 7986 doi: 10.1038/s41586-023-06537-z
ミトコンドリアは、細胞に捕捉されたプロテオバクテリアがエネルギー産生と代謝のために細胞内に取り込まれたという古代の内部共生過程に由来すると考えられている。ミトコンドリアは細胞分裂と分化の際に分離され、ミトコンドリアとミトコンドリアDNAゲノムは親細胞から娘細胞へと垂直遺伝する。しかし最近、一部のタイプの細胞が自身のミトコンドリアを外部へと放出して、発生的に関係のないタイプの細胞へと送り込むことを示す研究結果が増えつつあり、この過程は細胞間ミトコンドリア移送と呼ばれている。本論文で我々は、ミトコンドリアが細胞間を運ばれる機構について述べ、細胞間ミトコンドリア移送が健康や病気の際にさまざまな器官系の生理学的性質や機能を調節する仕組みについて論じる。そして、細胞代謝、がん、免疫系、組織の恒常性維持、ミトコンドリアの品質維持、創傷治癒、脂肪組織の機能の調節にミトコンドリア移送が果たす役割について、特に重点をおいて検討する。我々はまた、ヒトの病気の治療と細胞治療を拡充するための治療戦略として、細胞間ミトコンドリア移送が有望な標的であることも強調する。

