物性物理学:5層菱面体グラフェンにおける軌道マルチフェロイック特性
Nature 623, 7985 doi: 10.1038/s41586-023-06572-w
強的秩序は、物質中のスピンの自発偏極および電荷と格子の自由度を記述する。マルチフェロイクスと呼ばれる、複数の強的秩序を示す材料は、多機能電気・磁気デバイス応用において重要な役割を担っている。ハニカム格子を持つ二次元材料では、電子スピンによってではなく純粋に軌道自由度によって強的秩序が駆動されるという、従来とは異なるマルチフェロイック特性を操作する機会が得られる。こうした秩序には、電子のバレーに対応するフェロバレー特性や、量子幾何学的効果によって支えられたフェロ軌道磁性がある。こうした軌道マルチフェロイクスでは、強いバレー–磁性結合と、外場に対する大きな応答が得られる可能性があり、多状態メモリー素子や、バレー状態と磁性状態の電気的制御などのデバイス応用が可能になる。今回我々は、低温磁気輸送測定を用いた5層菱面体グラフェンにおける軌道マルチフェロイック特性を報告する。我々は、正孔ドーピングにおいて、非常に大きなホール角(tanΘH > 0.6)と軌道磁気ヒステリシスを伴う異常なホール信号Rxyを観測した。異なるバレー偏極と軌道磁化を伴うこうした4つの状態が存在して、バレー–磁性四重項を形成している。ゲート電場Eを掃引したところ、この四重項をつなぐRxyのバタフライ形状のヒステリシスが観測された。このヒステリシスは、フェロバレートロニック秩序が、E · B複合場(ここでBは磁場)には結合するが個々の場には結合しないことを示している。Eを調整することで、各強的秩序の独立したスイッチングと、それらの同時不揮発性スイッチングが実現されると思われる。今回の観測結果は、これまで知られていなかったタイプのマルチフェロイクスを実証しており、電気的に調整可能な超低消費電力のバレートロニクスデバイスや磁性デバイスを示している。

