微生物学:ATPとSAMとの共役を介した抗ウイルスIII型CRISPRシグナル伝達
Nature 622, 7984 doi: 10.1038/s41586-023-06620-5
CRISPR系は原核生物界に広く見られ、可動性遺伝因子に対する適応免疫をもたらす。III型CRISPR系は、シグネチャー遺伝子であるcas10と共に、CRISPR RNAを使って非自己RNAを検出し、酵素サブユニットであるCas10を活性化させ、不可欠なヒスチジン–アスパラギン酸(HD)ヌクレアーゼドメインを介して直接的に、あるいは多様な補助エフェクターを活性化するサイクリックオリゴアデニル酸セカンドメッセンジャーの合成を介して間接的に、可動性遺伝因子から細胞を防御する。III型CRISPR系のサブセットは、特徴が明らかにされていないCorAファミリーの膜タンパク質や関連するNrNファミリーのホスホジエステラーゼをコードしており、これらは抗ウイルス防御において機能すると予測されている。本論文では、Bacteroides fragilis由来のCorA関連III-B型(Cmr)CRISPR系を大腸菌(Escherichia coli)で発現させると、可動性遺伝因子に対する免疫が誘導されることを示す。しかし、B. fragilisのCmrは、活性化時にサイクリックオリゴアデニル酸種を合成しない代わりに、S-アデノシルメチオニン(SAM、別名AdoMet)にATPをホスホジエステル結合で共役させることで、SAM-AMPを生じる。一度合成されると、SAM-AMPはCorAエフェクターと結合し、おそらく膜の完全性を破壊することで細胞休眠や細胞死を誘導する。SAM-AMPは、CRISPR関連ホスホジエステラーゼやSAM-AMPリアーゼによって分解され、サイクリックオリゴアデニル酸特異的なリングヌクレアーゼに類似した「offスイッチ」となると思われる。このようにSAM-AMPは、抗ウイルスシグナル伝達の新たなクラスのセカンドメッセンジャーであり、細胞のさまざまな状況において異なる役割で機能する可能性がある。

