微生物遺伝学:トランスポゾンにコードされたヌクレアーゼはガイドRNAを使って自己の利己的拡散を促進する
Nature 622, 7984 doi: 10.1038/s41586-023-06597-1
挿入配列は細菌で広く見られる小型の転位性遺伝因子で、自身の移動と維持に必要な遺伝子だけをコードしている。IS200ファミリーとIS605ファミリーのトランスポゾンは、TnpAトランスポザーゼにより触媒される「ピール・アンド・ペースト」転位を行う。しかし、これらは多様なTnpBファミリー、IscBファミリーのタンパク質もコードしていて、TnpBファミリーはCRISPR関連エフェクターCas12と、IscBファミリーはCas9と進化的に関連がある。最近の研究で、TnpBとIscBはガイドRNAを用いるDNAエンドヌクレアーゼとして機能することが明らかになったが、この活性のさらに幅広い生物学的役割はまだ解明されていない。本論文では、TnpBとIscBが、TnpA型転位機構の結果としてトランスポゾンが永久に失われることの防止に非常に重要であることを示す。我々は、好熱性細菌Geobacillus stearothermophilusから、TnpBとIscBの複数のオルソログをコードする関連のある挿入配列ファミリーを選んで、1個のTnpAトランスポザーゼが幅広いトランスポゾン移動活性を持つことを明らかにする。トランスポゾンの両側の配列を再連結することによって形成されるドナー接合部は、ガイドRNAを利用するTnpBおよびIscBヌクレアーゼによる分解の効率の良い標的となり、TnpBとTnpAが同時に発現されると、TnpAだけが発現されている場合に比べてトランスポゾンの保持率がかなり大幅に上昇した。注目すべきことに、TnpAとTnpBが共存すると組換えの頻度も上昇し、TnpB単独の場合の頻度を上回る。これらの知見を総合することにより、ガイドRNAを用いるDNA切断は、最初は転位因子の利己的遺伝と拡散を偏向的に後押しするための生化学活性として生じ、後には抗ウイルス防御手段としてのCRISPR–Cas適応免疫の進化の間に使われたことが明らかになった。

