腫瘍免疫学:PTPN2/PTPN1阻害剤ABBV-CLS-484は強力な抗腫瘍免疫を引き起こす
Nature 622, 7984 doi: 10.1038/s41586-023-06575-7
免疫チェックポイントの阻害は一部のがん患者には有効だが、大半の患者は現在の免疫療法に耐性を示すので、抵抗性を克服できる新しい方法が求められている。プロテインチロシンホスファターゼPTPN2とPTPN1は炎症の主要な調節因子であり、腫瘍細胞または免疫細胞のどちらか一方でこれを遺伝学的に欠失させると、抗腫瘍免疫が促進される。しかし、ホスファターゼを薬剤の標的にするのは難問であり、特に活性部位は創薬標的にはできないと考えられてきた。今回我々は、PTPN2とPTPN1の活性部位の強力な阻害剤ABBV-CLS-484(AC484)を発見し、詳しい性質を明らかにした。AC484は画期的新薬であり、経口投与による生物学的利用が可能である。in vitroでのAC484投与により、インターフェロンに対する応答が増幅され、複数の免疫細胞サブセットの活性化が促進され、機能が増強された。PD-1阻害に抵抗性を示すがんのマウスモデルでは、AC484の単剤治療で強力な抗腫瘍免疫が誘発された。AC484は腫瘍の微小環境に炎症を起こさせ、JAK–STATシグナル伝達を増強してT細胞の機能不全を減少させることによって、ナチュラルキラー細胞とCD8+T細胞の機能を促進することが分かった。PTPN2とPTPN1の阻害剤はがん免疫療法の新しい戦略として有望であり、現在、進行固形腫瘍の患者で評価が行われている(臨床試験識別番号NCT04777994)。さらに広く見れば、この研究によって細胞内の重要な免疫調節因子の低分子阻害剤が、抗体をベースとする免疫チェックポイント阻害に匹敵する、あるいはそれを超える効果を達成する可能性があることが、前臨床モデルで明らかになった。このように、AC484はがんの免疫療法として臨床試験による評価に進んだ我々の知る限りで初めてのホスファターゼ活性部位阻害剤であり、これによって、この重要な酵素クラスを標的とするさらなる治療薬への道が開けるだろう。

