材料科学:液体を自動制御するマイクロ流体トランジスター
Nature 622, 7984 doi: 10.1038/s41586-023-06517-3
マイクロ流体工学は、分子生物学、合成化学、診断学、組織工学における著しい進歩を可能にしてきた。しかし、かねてからこの分野には、電子回路の正確さ、モジュール性、拡張性で流体や浮遊物質を操作するという、非常に重要な要望がある。電子トランジスターによって、電子チップによる電気の自動制御の前例のない進歩が可能になったのとちょうど同じように、トランジスターに類似したマイクロ流体素子によって、マイクロ流体チップによる試薬、液滴、単一細胞の自動制御の改善が可能になるかもしれない。電子トランジスターのマイクロ流体版を作り出そうとするこれまでの研究では、トランジスターの飽和挙動が再現されておらず、現代の回路設計の基本である比例増幅を実現できなかった。今回我々は、流量制限という流体現象を利用して、電子トランジスターの電流–電圧特性に全く類似した流量–圧力特性による比例増幅ができるマイクロ流体素子を開発している。次に我々は、このマイクロ流体トランジスターを用いて、増幅器、レギュレーター、レベルシフター、論理ゲート、ラッチを含む、基本的な電子回路を流体分野に直接移行させた。さらに我々は、こうした構成要素を組み合わせて、タイマーやクロック回路など、より複雑な流体制御装置も作り出した。さらに我々は、電子回路を使わずに、単一の浮遊粒子を感知して信号処理を行い、それに基づいて各粒子の動きを決定論的に制御する粒子分注装置を実証する。電子回路設計の膨大なレパートリーを活用することで、マイクロ流体トランジスターを用いた回路によって、ラボオンチップのプラットフォーム向けに、液体や単一浮遊粒子を操作する流体自動制御装置の実現が可能になる。

