ヒトの発生:ナイーブ型ES細胞からのヒト受精後14日目の完全な着床後胚モデル
Nature 622, 7983 doi: 10.1038/s41586-023-06604-5
ヒトの着床後の発生の研究能力は、着床後の子宮内発生に関連する倫理的および技術的な難題によって制限されている。空間的に組織化された形態形成と、ヒトの着床後の受胎産物の特徴となる全ての胚組織および胚体外組織(胚盤、二層性胚盤、卵黄嚢、絨毛膜嚢、胚周囲の栄養膜細胞層)の構造を備える胚様モデルはいまだ存在していない。最近、マウスのナイーブ型胚性幹細胞から生じる胚性幹細胞および胚体外幹細胞は、空間的に組織化された形態形成を行う、原腸形成後の構造を持った幹細胞ベースの胚モデル(SEMと呼ばれる)に自己集合することが示されている。今回我々は、遺伝的改変を行っていないヒトナイーブ型胚性幹細胞(改良型ヒトナイーブ幹細胞培養条件で培養)のみを用いて、この知見をヒトへと拡大した。このような十分に統合された完全なヒトSEMは、着床後のヒト胚の既知のほぼ全ての細胞系譜と区画(胚盤葉上層、胚盤葉下層、胚体外中胚葉、そして胚体外中胚葉を囲む栄養膜細胞層など)の構成を再現する。これらの完全なヒトSEMは、受精後13~14日目までの着床後段階の胚形成(カーネギー発生段階6a)の主要な特徴に類似した発生の成長動態を示した。これらには、胚盤や二層性胚盤の形成、胚盤葉上層の内腔形成、極性のある羊膜形成、前後対称性の破れ、始原生殖細胞の指定、臓側内胚葉と壁側内胚葉を持つ極性のある卵黄嚢の形成、胚体外中胚葉の拡大(絨毛膜腔と付着茎を明確にする)、栄養膜細胞層が取り囲む区画(合胞体層と小窩の形成を示す)が含まれる。このSEMプラットフォームにより、おそらく、ヒトの着床後早期から原腸形成段階頃までの、これまで到達できなかった発生期間を実験的に調べることができるようになるだろう。

