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健康科学:イングランドにおける院内SARS-CoV-2感染の負荷と動態

Nature 622, 7982 doi: 10.1038/s41586-023-06634-z

院内伝播は、中東呼吸器症候群コロナウイルス(MERS-CoV)や重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)のエピデミックに大きな役割を果たしたが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)のパンデミックにおけるその役割についての大規模な研究はない。院内伝播は、最も脆弱な人々へこのウイルスが拡散するリスクとなり、病院と地域の相互作用を介してより広範な規模の影響を持つ可能性がある。今回我々は、イングランドにおける急性期病院のデータを用いて院内伝播を定量化し、起こり得る拡散経路や伝播リスクの増大と関連する因子を評価し、より広範な動的影響について調査した。その結果、2020年6月から2021年3月までの間に、9万5000〜16万7000人の入院患者が病院内でSARS-CoV-2に感染したと推定された(この期間の全入院の1〜2%)。時系列データの解析によって、病院内でSARS-CoV-2に感染した患者が、他の患者への主な感染源となった証拠が見つかった。入院患者への伝播の増加は、病院における個室数の少なさやベッド当たりの暖房容積の小ささと関連していた。さらに我々は、院内伝播を減らせば、地域伝播を抑制する上で、時々中断されるロックダウン対策が及ぼす政策の効率をかなり向上できることを示す。これらの知見は、これまで認識されていなかった院内伝播の規模を明らかにし、院内抑制措置の対象や目標に直接関わっていて、今後の大きな影響もたらす病原体の伝播を制限するための態勢がより整った病院を計画する必要性を浮き彫りにしている。

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