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進化学:魚類の連続的な化石記録から明らかになった適応放散に関する重要な手掛かり
Nature 622, 7982 doi: 10.1038/s41586-023-06603-6
適応放散は、生命の極めて大きな多様性を生み出すのに寄与してきた。適応放散には生態学的な機会が前提条件になると考えられているが、どの系統が放散するかを決定する上での、種の生態学的柔軟性と到着順序の影響の相対的な重要性に関してはほとんど知られていない。また、この疑問の解決に役立ち得る古生物学的記録は乏しい。ビクトリア湖では、カワスズメ科魚類(シクリッド類)の大規模な適応放散が、最近の極めて短い期間に進んだ。本論文で我々は、沿岸から沖への勾配に沿って採取された一連の長い堆積物コアから得られた、豊富な連続的化石記録を提示する。数千個の歯の化石から、魚類群集の集合における事象の時系列が再現された。我々は、この系内の全ての主要な魚類系統に関して、到着の順序、相対的な個体数、生息地の占有状況を明らかにする。主要なタクソンは、現在の湖が形成され始めるや否や、全て同時に到着したことが分かった。放散したハプロクロミン類シクリッド系統の他系統より早い到着や、それらの定着時の数的優位性を示す証拠はいずれも存在せず、そのため、生態学的な先住効果(priority effect)の裏付けは得られなかった。一方、同湖では多くのタクソンが初期に定着しており、個体数が増えたものも複数あったにもかかわらず、水深の深い開放水域という新たな生息地が出現した後にそこで存在し続けたのはシクリッド類のみであった。このような生息地勾配は、種分化でも大きな役割を果たしてきたことが知られており、我々の知見は、適応放散のカギとなったのは、到着順序による優先性や初期の数的優位性ではなく、生態学的柔軟性であったとする仮説に合致する。

