Article

臓器移植:異種移植用のヒト化ブタドナーの設計と検証

Nature 622, 7982 doi: 10.1038/s41586-023-06594-4

ヒトへの移植に対するブタ臓器の有望性は、ヒトの死体モデルで行われた最近の研究と異種移植片の人道的使用によって調べられている。ヒトでの研究に進むには、すぐに臨床使用できるブタドナーを作成し、その異種移植片の非ヒト霊長類での試験が成功する必要がある。本論文で我々は、遺伝子操作を加えたブタドナーからの移植用腎臓を設計し、実際に作成して、それをカニクイザルモデルへと移植した結果、長期的な生命維持機能が見られたことを報告する。このブタドナーでは、遺伝子操作により69カ所のゲノム編集を行い、グリカン抗原を除去し、導入ヒト遺伝子を過剰発現させ、ブタ内在性レトロウイルスを不活性化した。in vitroでの機能解析によって、遺伝子編集を行った腎臓の内皮細胞が、ヒト内皮細胞と区別がつかない程度まで炎症を調節することが明らかになり、これらの編集後の細胞は高レベルのヒト免疫適合性を獲得したと考えられた。カニクイザルに移植した場合、3種類のグリカン抗原をノックアウトしただけの移植腎はほとんど生着しなかったが、グリカン抗原のノックアウトに加えて導入ヒト遺伝子を発現する移植腎は生存期間が有意に長かったことから、in vivoでの導入ヒト遺伝子の発現には利点があると考えられる。これらの結果は、腎臓異種移植の前臨床実験が非ヒト霊長類で成功する可能性を示しており、これによって我々は遺伝学的操作を加えたブタ移植腎の臨床試験に一歩近づいたと言える。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度