構造生物学:クライオ電子顕微鏡構造によって明らかになった天然のGABAA受容体の集合と薬理学的性質
Nature 622, 7981 doi: 10.1038/s41586-023-06556-w
A型γ-アミノ酪酸受容体(GABAAR)は脳の主要な抑制性受容体であり、麻酔薬や鎮静剤、睡眠薬、抗うつ剤などの広範にわたる臨床薬の標的である。しかし、GABAARの薬理学的性質についての我々の理解は、19の多様なサブユニットから生じる可能性のある五量体の非常に多くの集合体構造と臨床に関わる受容体についての構造学的知識が欠けていることにより妨げられてきた。今回我々は、広く発現しているα1サブユニットを含む天然のマウスGABAAR集合体を単離し、不眠症治療薬(ゾルピデム〔ZOL〕とフルラゼパム)および産後うつ治療薬(神経ステロイドであるアロプレグナノロン〔APG〕)と複合体を形成した場合の構造を明らかにする。我々は、クライオ電子顕微鏡解析と単一分子光退色実験を用いて、脳内にある3つの主な構造的集団、すなわち、2つのα1サブユニットを含むカノニカルなα1β2γ2受容体集団と、α1を1つとα2またはα3のどちらかのサブユニット1つを含む2つの集団を明らかにした。この中で、1つのα1を含む受容体は、膜貫通ドメインと細胞外ドメインの間でのよりコンパクトな配置を特徴としている。APGは、試料に加えていない場合にも膜を貫通しているα/βサブユニットの界面に結合していて、天然のGABAARの調節における内在性神経ステロイドの重要な役割が明らかになった。神経ステロイドは、構造に関与している脂質と共に働いて、受容体全体にわたる大規模なコンホメーション変化を引き起こし、これがイオンチャネルのポア、それにGABAや不眠症治療薬の結合部位を調整している。我々のデータは、α1を含む主要なGABAAR集合体が内在性神経ステロイドと結合した構造を明らかにしており、これらによって構造学的全体像が明確になり、サブタイプ特異的な薬剤の開発が可能になるだろう。

