Article

免疫学:胸腺の模倣細胞は自己寛容誘導を超えた機能を持つ

Nature 622, 7981 doi: 10.1038/s41586-023-06512-8

ウイルスや細菌、菌類を含めたあらゆる種類の病原体に対する有効な防御には、胸腺において正常な免疫機能を持つT細胞の発生が必要である。そのために、T細胞は胸腺内で極めて厳密な教育プログラムを受け、その際に、機能しないT細胞クローンと自己反応性T細胞クローンはどちらも、正と負の選択手段によって除去される。これらの過程では、胸腺上皮細胞(TEC)が不可欠な役割を果たしており、これまでの研究によって、これらの細胞は非常に不均一であることが明らかにされている。今回我々は、マルチオミクス解析により、マウスにおいてTECの機能的多様性と発生的多様性に関するさらなる手掛かりを提示し、細胞の転写状態とクロマチン全体像に基づいたTEC区画の詳細なアトラスを示す。この解析により、内分泌細胞、M細胞、筋細胞などの機能が詳しく解明されている実質細胞集団に類似した、非典型的なTECサブセットが明らかになった。内分泌細胞型とM細胞型のTEC集団に焦点を絞って調べたところ、内分泌細胞型TECは発生にInsm1を必要とし、胸腺の細胞性の維持に極めて重要で、この働きはグレリンに依存していることが明らかになった。これに対してM細胞型TECは、発生にSpibを必要とし、胸腺のIgA+形質細胞の生成に不可欠であった。これらの知見をまとめると、髄質性のTECは、分子的に異なり、機能の明確なさまざまなタイプの細胞へ分化する能力を持ち、中枢性免疫寛容の誘発だけでなく、胸腺に常在する他の細胞集団の恒常性調節にも関与していることが明らかになった。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度