神経科学:特殊化したアストロサイトが介在する中枢神経系のグルタミン酸作動性グリア伝達
Nature 622, 7981 doi: 10.1038/s41586-023-06502-w
複数の形式によるアストロサイト–ニューロン間のコミュニケーションは、脳内回路の構築や機能を支配している。例えば、アストロサイトは高速のグルタミン酸の放出を介して、シナプスネットワークの興奮性、可塑性、同期的活動を制御でき、一方、神経精神障害ではアストロサイトの調節不全が関与してもいる。アストロサイトが高速かつ限局的なグルタミン酸放出を介してコミュニケーションするには、それらはニューロンと同様なCa2+依存的なエキソサイトーシス装置を備えているはずである。しかし、そうした機構の存在は、データに一貫性がないことや直接的な支持証拠を欠くことから疑問視されてきた。今回我々は、最近明らかになったアストロサイトの分子的不均一性を考慮し、分子生物学・バイオインフォマティクス・画像化の手法を、in vivoでグルタミン酸エキソサイトーシスを干渉する細胞特異的な遺伝的ツールと共に用いて、このアストロサイトのグルタミン酸エキソサイトーシス仮説を再検討した。我々はまず、既存の単一細胞RNA塩基配列データベースと我々のpatch-seqデータの解析から、海馬アストロサイトに分子的に区別できる9つのクラスターを特定した。それらの中に、シナプス様のグルタミン酸放出装置を選択的に発現し、特定の海馬部位に局在する注目すべき亜集団を発見した。次に、in situおよびin vivoでGluSnFRを用いたグルタミン酸画像化を使って、対応するアストロサイトの亜集団が、アストロサイト選択的な刺激に確実に反応して、空間的に厳密なホットスポットで秒以下の速さでグルタミン酸を放出することを明らかにした。この放出は、アストロサイトを標的にしたVGLUT1(vesicular glutamate transporter 1)の欠失によって抑制された。さらに、この輸送体やそのアイソフォームであるVGLUT2の欠失実験により、通常の行動や病理的過程の際に皮質-海馬回路や黒質線条体回路にグルタミン酸作動性アストロサイトが特異的に関与していることも明らかになった。成体の脳で、このような特殊化したアストロサイトの非定型的な亜集団が見つかったことで、中枢神経系(CNS)のアストロサイトが生理的および疾患時に果たしている複雑な役割について新たな手掛かりが得られ、治療標的の1つとなる可能性が浮上した。

