免疫学:還元的カルボキシル化はT細胞の分化をエピジェネティックに指示する
Nature 621, 7980 doi: 10.1038/s41586-023-06546-y
病原体やがんに対する防御免疫は、抗原特異的なナイーブT細胞のエフェクターT細胞への活性化とクローン増殖によって仲介される。ナイーブT細胞は、急速な増殖とエフェクター機能を維持するために、好気的解糖のレベルの上昇だけでなく、ミトコンドリア代謝と酸化的リン酸化を介して、静止状態の代謝を同化代謝に切り替えて、エネルギーとシグナル伝達分子を作り出している。しかし、この代謝再配線がT細胞の分化を駆動および決定する仕組みはいまだ分かっていない。今回我々は、増殖中のエフェクターCD8+ T細胞が、ミトコンドリア酵素であるイソクエン酸デヒドロゲナーゼ2(IDH2)を介して、グルタミンを還元的にカルボキシル化することを示す。注目すべきことに、IDH2をコードする遺伝子を欠失させても、T細胞の増殖もエフェクター機能も損なわれないが、記憶CD8+ T細胞の分化が促進された。従って、キメラ抗原受容体(CAR)T細胞のex vivoでの製造中にIDH2を阻害すると、記憶T細胞の特徴が誘導され、黒色腫、白血病、多発性骨髄腫で抗腫瘍活性が増強された。機構的には、IDH2の阻害は、代償的な代謝経路を活性化して、ヒストン修飾酵素を調節する代謝物の不均衡を引き起こし、これにより記憶T細胞の分化に必要な遺伝子へのクロマチン接近性が維持される。これらの知見から、CD8+ T細胞における還元的カルボキシル化は、そのエフェクター応答と増殖には不可欠ではないが、主に代謝物パターンを作り出すことで、CD8+ T細胞をエフェクター分化の最終プログラムにエピジェネティックに固定することが示された。この代謝経路を阻害すると、記憶T細胞の形成増加が可能になり、これを利用すればCAR T細胞の治療効果を最適化できる可能性がある。

