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素粒子物理学:反物質の運動に及ぼす重力の影響の観測

Nature 621, 7980 doi: 10.1038/s41586-023-06527-1

1915年に発表されて以来、アインシュタインの一般相対性理論は、最も成功を収めた重力の記述となっている。1919年の日食から重力波の観測まで、この理論は多くの重要な実験的検証に合格してきた。しかし、暗黒物質と暗黒エネルギーという概念の進展は、宇宙における重力が作用する実体について学ぶべきことが多く存在することを例示している。一般相対性理論における特異点や、量子重力理論の欠如は、我々の考える描像が不完全であることを示唆している。従って、エキゾチックな物理系において重力を調べることは賢明と言える。1915年の時点では、アインシュタインは反物質を知らなかった。ディラックの理論が登場したのは1928年で、陽電子が観測されたのは1932年である。それ以来、重力と反物質については多くの思索がなされている。理論面での統一見解は、いかなる実験室質量も地球から引力を受けるはずであるというものだが、反物質が物質から斥力を受けるとした場合の宇宙論的な影響もいくつか考察されている。一般相対性理論の弱い等価原理(WEP)によれば、全ての質量は、その内部構造とは無関係に重力に対して同じように作用しなければならない。今回我々は、反水素原子が、ALPHA-g装置内で磁気閉じ込めから解放されると、地球への重力的な引力と矛盾しない挙動を示すことを明らかにする。この場合、斥力である「反重力」は除外される。今回の実験は、反原子と地球の間の重力加速度の大きさの精密研究によってWEPを検証する道を開く。

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