細胞生物学:病原菌は植物細胞に水や溶質の透過性チャネルを送り込む
Nature 621, 7979 doi: 10.1038/s41586-023-06531-5
動物病原菌と植物病原菌の多くは、III型分泌装置を使って宿主細胞へエフェクタータンパク質を送り込む。これらのエフェクタータンパク質が宿主細胞中でどのように働くかを解明することは、動植物の感染症を理解する上で極めて重要である。火傷病菌(Erwinia amylovora)のDspEやPseudomonas syringaeのAvrEをはじめとする、広く保存されたAvrEファミリーのエフェクターは、多様な植物病原菌による発病機序に中心的な役割を果たしている。これらの保存されたエフェクターは、「水浸漬」と宿主の細胞死の誘発に関わっており、感染組織における細菌の増殖を引き起こす。しかし、AvrEファミリーのエフェクターの正確な生化学的機能の機構の解明は、その発見から30年がたっても進んでいない。今回我々は、AvrEファミリーのエフェクターは、細菌のポリンに似たβバレル構造に折りたたまれることを示す。アフリカツメガエル(Xenopus)の卵母細胞でAvrEとDspEを発現させると、内向きと外向きの電流、水透過性が生じ、オスモル濃度依存的な卵母細胞の膨潤と破裂が起こった。リポソームでの再構成によって、DspEチャネルは単独で、フルオレセイン色素のような小分子を透過させるのに十分であることが確かめられた。DspEチャネルポアの予測サイズ(15~20 Å)に基づいて、化学的阻害物質を標的としたスクリーニングを行ったところ、ポリアミドアミンのデンドリマーがDspE/AvrEチャネル阻害剤であることが明らかになった。注目すべきことに、ポリアミドアミンはアフリカツメガエル卵母細胞において、また火傷病菌やP. syringaeの感染時にAvrEとDspEの毒力を幅広く阻害した。細菌エフェクターの中心となる重要な1ファミリーの生化学機能を明らかにしたこれらの結果は、細菌による発病機序の研究に、概念的にも実用的にも幅広く役立つだろう。

