細胞生物学:TIM23複合体によるミトコンドリアタンパク質取り込みの構造基盤
Nature 621, 7979 doi: 10.1038/s41586-023-06239-6
ミトコンドリアは、その約1000〜2000種類の構成タンパク質のほぼ全てを二重の膜であるエンベロープを介して細胞質ゾルから取り込む。遺伝学的研究と生化学的研究により、TIM23複合体と呼ばれる保存されたタンパク質トランスロカーゼが、プレ配列を含むタンパク質(プレタンパク質)のミトコンドリアマトリックスと内膜への取り込みを仲介していることが示されている。TIM23複合体の約10種類の異なるサブユニット中で必須とされる複数回膜貫通タンパク質Tim23は、進化的に関連のあるタンパク質Tim17と共にタンパク質輸送チャネルを形成していると、ずっと以前から考えられてきた。しかし、これらのサブユニットが膜中に輸送経路を形成し、取り込みを可能としている機構は、構造情報がないためにはっきり分かっていない。今回我々は、出芽酵母(Saccharomyces cerevisiae)由来のコアTIM23複合体(ヘテロ三量体であるTim17–Tim23–Tim44)のクライオ電子顕微鏡構造を決定した。広く知られているモデルとは異なり、Tim23とTim17自体は水で充たされたチャネルを形成しているのではなく、脂質に露出した凹んだ空洞を別々に形成していて、個々の空洞は逆の方向を向いていた。我々の構造学的解析と生化学的解析から、Tim17が作る空洞はタンパク質輸送経路を形成しているが、Tim23は形成しておらず、Tim23はおそらく構造学的な役割を果たしていることが分かった。これらの結果はまた、基質であるポリペプチドの輸送中には、必須でないサブユニットMgr2が、Tim17が作る空洞の側方にある開口部を閉じて輸送過程を促進していることを示唆している。TIM23が仲介するタンパク質取り込みと選別はミトコンドリア生合成における中心的な経路であり、我々はこの機構についての新たなモデルを提案する。

