発生生物学:ヒト脳オルガノイドにおける細胞運命レギュロームの推定と摂動
Nature 621, 7978 doi: 10.1038/s41586-022-05279-8
多能性幹細胞から成長させた自己組織化する神経オルガノイドと単一細胞ゲノム技術を組み合わせることで、ヒト脳の発生の基礎となる遺伝子調節ネットワークを調べる機会が得られる。今回我々は、ヒトオルガノイドにおいて、神経上皮形成、パターン形成、脳領域化、神経形成をカバーするオルガノイド発生の詳細な経時変化について、単一細胞でのトランスクリプトームと接近可能なクロマチンのデータを獲得し、時間的に動的で脳領域特異的な調節領域を特定した。我々は、マルチオミクスデータと転写因子の結合部位予測を組み込んだ柔軟な枠組みであるPandoを開発し、オルガノイドの発生を説明する、全体的な遺伝子調節ネットワークを推定した。プールされた遺伝的摂動と単一細胞トランスクリプトームの読み出しを用いて、オルガノイドでの細胞運命や細胞状態の調節に必要な転写因子を評価した。その結果、多数の細胞運命を調節する因子もあれば、分化後のニューロンの細胞状態に影響を及ぼす因子もあることが分かった。我々は、転写因子GLI3がヒトにおける皮質運命の確立に必要であることを示し、これまで哺乳類モデル系で行われた研究を再現した。我々は、正常細胞あるいはGLI3を摂動した細胞においてトランスクリプトームおよびクロマチン接近性を測定し、終脳運命決定の中心となる2つの異なるGLI3レギュロームを特定した。1つは、GLI3がHES4/5を直接の標的とすることにより背腹パターン形成を調節し、もう1つは発生後期の神経節隆起の多様化を制御する。まとめると我々は、ヒトのモデル系と単一細胞技術を活用して、ヒトの発生生物学的状況を再構築し得る方法についての枠組みを示している。

