代謝:トリグリセリド生合成の代替経路の特定
Nature 621, 7977 doi: 10.1038/s41586-023-06497-4
トリアシルグリセロール(TAG)は体内の主要な貯蔵エネルギー源であり、これは、ミトコンドリアのβ酸化に対する重要な基質プールとなっている。TAG量の不均衡は、肥満症、心臓病をはじめ、さまざまな病気に関連している。ヒトでは、TAGは補酵素Aと結合した過剰な脂肪酸から、ジアシルグリセロールO-アシルトランスフェラーゼ(DGAT1とDGAT2)によって合成される。他の生物では、この活性は他の酵素によって補完されているが、そのような代替経路がヒトにも存在するのかどうかは不明である。今回我々は、一倍体ヒト細胞でのDGAT経路の破壊と、帰納的な遺伝学的手法により、DGAT経路とは無関係なTAG合成系を明らかにする。この系は、今回DIESLと命名したタンパク質(これまで機能が知られていなかったアシルトランスフェラーゼでTMEM68とも呼ばれる)とその調節因子であるTMX1で構成される。機構としては、TMX1は小胞体でDIESLに結合してこれを制御しており、TMX1が欠損するとDIESL依存的な脂質滴が無制約に形成されるようになる。DIESLは自律的なTAGシンターゼであり、大腸菌(Escherichia coli)でヒトDIESLを発現させると、大腸菌はTAG合成能力を獲得する。DIESLとDGATはどちらもジアシルグリセロールアシルトランスフェラーゼとして機能するが、特定の条件下では細胞のTAGプールに寄与している。機能としては、DIESLは、細胞外脂質が欠乏している間、膜のリン脂質を犠牲にしてTAGを合成し、ミトコンドリアの機能を維持する。マウスでDIESLを欠損させると、出生後の速やかな成長が妨げられ、栄養素の利用可能性が変化する際のエネルギーの恒常性に影響が及んだ。このように我々は、TMX1の強力な制御下にあるDIESLによって駆動される、代替的TAG生合成経路を明らかにした。

