Article
神経科学:LTP誘導はCaMKIIの酵素機能ではなく構造機能によって起こる
Nature 621, 7977 doi: 10.1038/s41586-023-06465-y
学習と記憶には海馬の長期増強(LTP)が必要だと考えられており、LTP誘導にはCa2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)の酵素活性が必要であるという考え方は、30年以上にわたって疑う余地なしとされてきた数少ない分子神経科学のセントラルドグマの1つである。しかし、我々が今回詳細に説明するように、実験的証拠は意外なほど決定的とは言い難い。CaMKIIの酵素活性およびLTPを阻害するこれまでの介入は全て、CaMKIIの構造的役割、特にNMDA型グルタミン酸受容体サブユニットGluN2Bへの結合にも干渉する。従って、今回我々は、新しい光遺伝学的/薬理遺伝学的ツールの相補的なセットの特徴を明確にして利用することで、CaMKIIの酵素機能と構造機能を識別した。いくつかの独立した種類の証拠により、LTP誘導は、CaMKIIの酵素活性ではなく、構造機能によって起こることが実証された。キナーゼ活性の唯一の関与は、T286の自己リン酸化を介したこの構造的役割の自己調節であり、このために数十年にわたってこの区別が明らかにならなかったのである。このT286の役割を回避するやり方で構造機能を直接開始させるだけで、CaMKIIの酵素活性が抑制されている場合でも、ロバストなLTPを誘導するのに十分であった。

