がんゲノミクス:BRCA1欠損がんとBRCA2欠損がんの長分子解析で見つかった、バックアップDNA修復の傷跡
Nature 621, 7977 doi: 10.1038/s41586-023-06461-2
相同組換え(HR)の欠損は、DNA再編成や細胞遺伝学的異常と関連している。逆説的になるが、HR欠損がんと特異的に関連するDNA再編成のタイプが染色体構造に及ぼす影響は最小限である。今回我々は、この見かけ上の矛盾を解決するために、数千の腫瘍に対するショートリードの全ゲノム塩基配列解読(WGS)プロファイルのゲノムグラフ解析と、BRCA1またはBRCA2の変異した46例の乳がんに対する高深度の合成リンクリード(linked-read)WGSを組み合わせた。これらのデータから、HR欠損腫瘍でよく見られる、独特な再編成のクラス(相補対と呼ぶ)が明らかになった。合成リンクリードWGSによって、同一の再編成方向性を持つ相補対は、長分子データでのみ区別可能な2つの異なる染色体産物の一方を生じることが明らかになった。一方(シス)の染色体産物は、離れた部位への短い断片のコピー・アンド・ペーストに対応していたが、もう一方(トランス)の染色体産物は、見かけ上バランスの取れた転座、または各連結部に大きな(10 kb)重複を伴う数メガ塩基の逆位だった。我々は、相補対の染色体産物全体に対する説明として、HR非依存的な複製再開修復機構を提唱する。合成リンクリードWGSからはまた、一本鎖アニーリングがヒトがんにおけるBRCA2欠損に特異的な修復経路であることも明らかになった。これらの特性を分類器に統合すると、BRCA1欠損ゲノムとBRCA2欠損ゲノムとの識別が改善された。まとめると我々のデータは、BRCA1欠損あるいはBRCA2欠損に特異的な再編成のクラスが、HR欠損細胞における細胞遺伝学的異常の起源であることを示している。

